表面粗さ規格の変化と適切な計測
表面粗さの規格は、年代ごとに進化してきました。
特に製造技術や材料工学の発展とともに、表面粗さの評価方法やその基準も変化しています。
1. 1950年代~1970年代:初期の表面粗さ規格
- 初期の表面粗さの規格は主に**JIS(日本工業規格)**に基づいており、表面粗さの評価方法としては「目視評価」や「触感」による評価が主流でした。実際的な測定機器(例えば、表面粗さ測定機)はまだ発展途上であり、簡便な方法が用いられていました。
- 1950年代~1960年代にかけて、JIS B 0601(表面粗さの記号とその分類)などが策定され、基準として使用されました。これにより、表面の凹凸を数値的に定義しようとする試みが始まりました。
2. 1980年代:精密測定技術の向上と規格の整備
- 1980年代には、電子的な表面粗さ測定器が普及し、JIS B 0601:1982やJIS B 0602(表面粗さの測定方法)など、より精度の高い規格が制定されました。この時期には、表面粗さの測定方法として、直線粗さ(Ra)や最大高さ(Rz)といった指標が標準化され、一般的に使用されるようになりました。
- また、**ISO 4287(国際規格)**など、国際的な規格も策定され、世界的に統一された基準が作られました。この頃、国際的な製造業者との取引において、ISO規格に準拠することが求められるようになりました。
3. 1990年代~2000年代:高精度化と新しい指標
- 1990年代以降、製造業の精度要求がさらに高まり、JIS B 0601:1999では、表面粗さの定義や評価方法に加え、細かい規定や新しい指標が盛り込まれました。また、ISO 4287の規定も改訂され、ピーク-バレー法やスペクトル解析法など、より詳細な分析手法が提案されました。
- さらに、粗さの種類として、**有効な波形(フィルタリング)**を考慮する新しい方法が採用されるようになり、特にハイテク分野(精密機器、半導体など)での利用が進みました。
4. 2010年代~現在:デジタル化と多様化
- 現在では、表面粗さの測定はデジタル技術に基づいた3Dスキャニングや非接触型測定機が多く使用されるようになり、測定精度や効率が大幅に向上しています。さらに、測定項目として、微細な凹凸や表面の加工痕なども詳細に評価されるようになりました。
- ISO 25178(表面粗さの3D評価)などの規格が登場し、表面粗さの評価において、これまでの2D基準に加えて3Dによる測定が標準化されました。また、加速度センサーや画像処理技術を用いた革新的な測定技術も登場しています。
主な規格の変更点まとめ
- 1950年代~1970年代:目視や触感による評価、基本的なJIS規格。
- 1980年代:精密測定器の普及、RaやRzといった指標の普及、ISO規格の登場。
- 1990年代~2000年代:新しい指標(例えばRsk、Rkuなど)の導入、高精度な測定技術の発展。
- 2010年代~現在:3D測定技術の導入、より詳細な解析手法(例:スペクトル解析)とデジタル化。
表面粗さの規格は時代とともに測定技術の進化や要求精度の向上に応じて細分化されているため、図面や仕様書の要求に対して適切な評価を行うことがとても重要です。