三次元測定機を活用した量産測定の課題と工夫
三次元測定機(CMM:Coordinate Measuring Machine)は、部品の寸法や形状を高精度に測定できる装置として、製造業で広く活用されています。しかし、量産品の測定に使用する際には、特有の課題があります。この記事では、ある自動車部品メーカーの事例をもとに、三次元測定機を効率的に活用するための工夫を紹介します。
事例:自動車エンジン部品の量産測定
自動車メーカーA社は、エンジン部品であるシリンダーヘッドの量産を行っています。この部品は、複雑な形状を持ち、寸法精度がエンジン性能に大きな影響を与えるため、精密な測定が必要です。しかし、以下のような課題がありました。
/測定時間の制約/
1つのシリンダーヘッドの測定には約30分かかり、1日に測定できる部品数が限られていました。量産ラインの速度を考えると、測定時間の短縮が必須でした。
/測定プログラムの複雑化/
シリンダーヘッドには多くの測定箇所があり、測定プログラムの作成と管理が複雑化していました。また、プログラム変更のたびに測定員が手作業で修正する必要があり、人的ミスが発生する可能性がありました。
/測定データの活用不足/
測定結果は一部の品質保証担当者しか活用しておらず、工程改善や不良率削減へのフィードバックが遅れていました。
課題解決の工夫
/測定時間の短縮/
A社では測定時間短縮のために、以下の取り組みを行いました:
・測定プログラムの自動化
測定プログラムの効率化には、自動生成ツールを活用しました。CADデータを基に測定プログラムを自動生成し、手作業によるエラーを防ぎました。また、プログラムの修正履歴を管理するシステムを導入し、変更内容を一元管理することでトレーサビリティを確保しました。
・測定データの有効活用
測定データの有効活用を進めるため、A社では品質管理手法としてQC検定を導入しました。これにより、測定結果を統計的に分析し、工程の安定性やばらつきの原因をより深く把握することが可能になりました。例えば、寸法変動の傾向を「管理図」で可視化し、不良発生につながる異常なばらつきを早期に特定できるようになりました。
さらに、測定データを効率よく整理・共有するために、ExcelのVBA(Visual Basic for Applications)を活用した自動化ツールを開発しました。このツールは以下の機能を備えています:
測定結果の自動集計:
三次元測定機から出力された大量の測定データを一括で読み込み、寸法ごとの平均値、ばらつき、管理限界などを自動計算。
レポート作成の効率化:
測定結果をグラフや管理図として自動生成し、関係者へのレポート作成時間を73%削減。
データ管理の一元化:
部品ごとやロットごとの測定結果を自動で分類し、トレーサビリティを強化。
これにより、測定データの整理と活用が格段に効率化しました。QC検定による統計的分析とVBAによるデータ処理の組み合わせは、測定業務の高度化に大きく貢献しました。特に、手作業によるデータ処理ミスが削減されただけでなく、エンジニアが分析に集中できるようになり、品質改善のスピードが向上しました。
まとめ
三次元測定機の量産測定には、効率性と精度を両立させるための工夫が欠かせません。今回の事例はその一例に過ぎませんが、他の製造業でも応用可能なヒントを提供できるでしょう。技術の進化とともに、三次元測定機の役割はますます重要になると考えられます。